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SINARIO 12-11-2008 09:17 к комментариям - к полной версии - понравилось!


1 すでに夜11時。バーの客らは帰ろうとはしない。何杯目かわからないジョッキで乾杯をし、お酒を飲み込んでいく。心地よいジャズが流れている。煙が充満したホールでは、至る所から笑い声と会話が聞こえてくる。イブニングドレスを着たホステスが客らを楽しませている。
歌が始まる。鮮やかなライトが照らされた舞台に男性が現れる。燕尾服を着て、両手に花を持っている。シャンソンらしきものを歌う。ホールは静まっていく。テーブルに一人で座る男性。顔を下に向けている。すでにビールジョッキ1杯以上は飲んでいる。しばらくして彼は顔を上げ叫ぶ。「ヒロシ!」


2 「ヒロシ!ヒロシ!」ヒロシの友人である中村が彼の背中を叩く。ヒロシは中村の方を振り返る。しばらく物思いに耽り友人らの話を聞いていなかったことが彼の顔から伺える。仲間は着物のホステスらのいるクラブにいた。男性らはみな30代前半である。
―最近お前おかしくねぇ? 中村が笑う。誰かに惚れたのかよ?
同僚らがこれにつっこみ、隣に座っているホステスの名前を挙げていく。
―マキちゃん。
―サチコちゃん。
―アキちゃん。
―ナオミちゃん。
―ミコちゃん。
皆は声を出して仲良く笑う。
―乾杯。中村が言う。 皆が飲んでいる。ヒロシは一口のみ、コップを机の上に置く。
ーごめん! ヒロシは立ち上がり、その場を抜ける。
皆、顔を見合わせる。疑わしそうに見ている。
中村がヒロシの後を追いかける。
エレベーター前の踊り場。ヒロシはエレベーターを待っている。
中村がやってくる。
ーヒロシ、どうしたんだよ。
ーここに俺を連れて来るなっていっただろ。(攻撃的に)この場所も人も好きじゃないんだよ。何もかも作り物で、下品で、汚い。
ーそうだけど。でもどうしたんだよ、お前。(中村は友人のことが理解できずにいる)だけどさ。いったいお前この場所の何をわかってるんだよ。
エレベーターがやってくる。ヒロシはエレベーターに乗る。
ー二回しか来てないくせに、下品だの汚いだのってさ。
ー子供時代こういうとこで過ごしたからわかるんだよ。
エレベーターが閉まる。中村はクラブに戻っていく。
3 タバコの煙が酒の匂いとともに漂う。バーでは人はすでにまばら。しかしいつものように騒がしい。手をとってホステスらが寄った客を外へ連れて行く。一歩歩くたびにホステスらにキスをしようとする。ホステスらは笑いながら彼の頭を叩き、明るい声で言う。-もういいから。家に帰ってよ。
ヒロシの声。僕の子供時代は幸せとは言えなかった。安いバーで子供時代を過ごした。知っていたのは、がやがやした音、うるさい会話、ホステスに言い寄る客、タバコの煙、それからたくさんの酒だけだった。
子供だったヒロシはバーのカウンター下にもぐりこむ。椅子の下、座っている客の足の間にもぐりこむ。カウンターの端にくると、椅子近くの地べたに座る。
ヒロシの声。子供時代は大人の乱暴さの雰囲気の中で過ごした。今思うことといったら、下品と汚らしさの二言に尽きる。
つまりそれは、そのバーで働いていた母にも当てはまる。でも当時僕が愛していたのは母だけだった。
舞台に明るい光が差し始める。ホールでタンゴが流れ始める。エレガントな女性が舞台に登場。動きは流れるようで、脚は音楽のリズムに合っている。バーのカウンターの下にいつも座っていたヒロシは目を輝かせていた。
ヒロシの声。母さんが踊っているのが好きだった。
手を前に差し出し、ヒロシは母の上半身を手のひらで覆い、脚だけを見ていた。
ヒロシの声。この脚が好きだったんだ。母さんが好きだった。
4.陸橋。数人の男性がどこで食事を取ろうか話している。
ヒロシは後ろを歩いている。中村がヒロシに近づく。
ー悪かったな。お前の母さんがバーで働いてたなんて知らなくてさ。お前にやな思い出があるってことも知らなくて。
ーああ、他に思い出なんてないしね。
―先に行っててよ。手紙をポストに出さなきゃだから、後から追いかけてくよ。
ヒロシは道を歩いて。
ヒロシの声。毎週クラブに行くたびに、子供時代への思いに耽るのだった。
5.すでに夜。ヒロシは、街灯もまばらな銀座の狭い通りを歩いていた。
ヒロシの声。つらい時代だった。皆が生き延びるために精一杯(精一杯)。母は僕を女でひとつで育てた。自分のことを惜しまず、毎晩働いていた。
ヒロシは横丁を歩く。角でカップルが抱き合っているのを見かける。ヒロシは向かいに座り、手のひらを前に出して彼らの方を見る。脚しか見えていない。観客は脚を見て、何が起こっているのかを見る。
ヒロシの声。多くの時間を一人で過ごした。友達もきれいな絵本もなかった。小便くさくて汚い横丁、暗くなった通りの端で抱き合うカップル、野良猫。これが僕の人生だった。これが僕の世界だった。僕が考え出した世界だった。僕は指の間から人を見ていた。
横丁を歩く脚。ホステスの脚。彼女が着るドレスが、早歩きのせいでなびく。ヒロシは指の間から、ホステスの脚だけを見ている。ヒロシに近づくと、彼女はヒロシの髪を引っ張って笑い、去る。
ヒロシの声。僕が見ていたのは脚だけだった。脚を見るだけでその人の性格が判る気がした。何を考え、何を欲しているかを。僕は指の間から世界を感じていた。
薄暗い道の端で男性が激しく女性にキスをしている。
―ちょっと見られてるわよ。だめ!-女性が言った。
―いいじゃねえか、見させとけば。勉強になるぜ。-男性が答える。激しさを増して女性にキスをする。
このとき横丁を母親が歩いてくる。母はヒロシを目にする。
母  「ちょっとここで何してんの?どうして家に帰らないの?」
彼女は彼を引き寄せ、横丁の出口へと押し出す。彼女は顔につらさを浮かべて息子を見る。そして空虚な目でカップルの方を見る。
6.舞台上にヒロシの母。彼女が踊っていると、客らは愛しそうに彼女の踊りを眺めている。踊りは優しさと同時に愛そのものであった。
ヒロシの声。母は客の皆に愛されていた。踊りに魅了されていた。隣に座っているホステスが与えることができないものを、客の多くが彼女の踊りに見出していた。母は踊りによって優しさと気持ちを彼らに与えることができた。だから母の脚が好きだった。
ヒロシはカウンターの下に座り、手を前に差し出して母を見ている。見ているのは脚だけである。
ヒロシの声。母は踊っていただけじゃなくて、接待をしていた。母の笑い声が一番透き通っていて明るかった。
ヒロシの母は、2人の客の接待をしている。何かを話し、楽しく笑っている。母はたくさんの酒を飲み、必死にこらえていた。
わかったわ。もう一度。これでおしまいよ。母は客とじゃんけんをする。-じゃんけ
7.(手の場面)-じゃんけんぽい。 皆仲良くしゃべっている。ヒロシは同僚とともにクラブでホステスと話している。
―ヒロシとミコちゃんが負け。喜んで中村が言う。
ヒロシとミコは手を組み合わせて一緒に飲む。周囲は大きな拍手をして盛り上げる。ゲームは終わり、皆はうるさく話し始める。ヒロシはミコを見つめながら、再び物思いに耽る。周囲の声は耳に入らず、ミコの顔だけが見える。
ヒロシの声。どうして僕はいつもこのクラブに戻ってしまうんだろう。どうしてクラブのことを考えると気が滅入るんだろうか。でも母さんのことを考えると幸せな気分になるんだろう。子供時代を思い出してみると、子供のときの母さんへの愛はとてつもなく大きなものだったことに気づいた。子供の時と同様に今でも母さんのことがとても好きだ。母さん以外の人を誰か愛することはできるんだろうか?もしかしたら、その答えをこのクラブで見つけられるかもしれない。
8 バーの薄暗い廊下。母とお客。客は母にキスをして言い寄っている。ヒロシは後ろから見ている。客はヒロシの顔を見る。客はさらに母に言い寄る。
客:じゃあ、あいつはどうすんだよ?
母:あいつって?
客:自分の息子だよ。
母:わからないわ。多分、彼を置き去りにしないといけなくなるかもしれない。つらいのよ。(母は振り向き、ヒロシを見る)もう、やめてちょうだい。(客をドアの方へ押しやる)もう店はおしまいよ。
母は一人で薄暗い廊下の真ん中に立っている。ヒロシは母の方へ駆け寄る。ヒロシは顔を母の脚に寄せる。目はどこか遠くを見つめている。床へ大粒の涙が落ちる。母がかすかに泣く声も聞こえる。
9 駅。電車。ヒロシと中村は話しながら通りを歩いている。
―なんか変だけどさ、お前がお袋さんのこと話してるの聞いてると、ミコにそっくりなんじゃないかって思うんだよな。もしかしたら、お前嘘ついて、ミコに気があるってことを言いたいだけじゃねえの?おい、お前白状しろよ。ミコとあってるだろ?俺当たってるか?
ヒロシには中村の関心がうれしい。しかし中村は正しい。
―何度か会ったよ。 ヒロシが言った。
―そうだと思ったよ。俺に隠し事はできねえよ。じゃあ、お袋さんのこと全部嘘ってことか?
―いや、嘘じゃないよ。
―そんならミコにお袋さんを早く紹介しなきゃな。そうすれば、似てるってことわかるだろうから。
10.バーの明るく照らされた舞台。ヒロシの母の踊りはいつものように素晴らしい。
ヒロシの声。母はその夜これまでにないほど美しく長く踊っていた。客らは常に彼女に酒を注いで、踊るようせがんだ。
バー閉店前。
歌手  「元気?家に帰るの?」
母  「平気。でもちょっとじっとしてから帰るわ。先帰って。大丈夫だから」
母はひどく苦しげに息をしている。歌手は出て行く。カメラは、気を失うように揺れて動く。母はホールを歩く。どの光も消え始める。母はカウンターに花を置く。カメラはカウンターの下へと降りる。そこにはヒロシが寝ている。光が消える。スポットライトが出て、明るくなり始める。カメラはカウンターの上を動く。カウンターの上の花が見える。カメラが近づくと、カウンターの反対端にろうそくの光に照らされた母が眠っている。深くため息をついている。ろうそくの炎が揺れる。まだ少し息があるが、それは途絶える。ろうそくが消える。
11 クラブ。ヒロシは友人らと一緒にいる。隣にはホステスの女の子たちが座っている。皆にぎやかに話している。ヒロシの耳にそれは入らず、懐かしい思いに浸っている。
ヒロシの声。たぶん、自分じゃ意識していなかったけど、ミコは実際母さんに似ているかもしれない。子供の時は指の間から世界を見ていた。母さんへの愛もそうだった。ミコと会えて、子供時代と母さんの死を乗り越えることができた。これまでずっと母さん以上に誰かを愛することはできないと思ってた。今はもう大人だけど、もう一度指の間から見てみたくなった。(ヒロシは手を前に出し、そしてやめる)もう誰かを愛することができる。

12昼間。歩行者天国。ヒロシはミコと何かを話して笑っている。ヒロシは彼女と手をつないでいる。通りを歩いている。5メートル歩いて立ち止まる。ヒロシは振り返って叫ぶ。「置いてくぞ!」
彼らに近づいていったのは6歳ほどの男の子。手に何かを持って彼らに見せている。そして両親(ヒロシ・ミコ)の手をとる。共に通りを歩いてゆく。

 

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