むかしむかし、あるところに、じいさまとばあさまがおりました。
じいさまは山へたきぎをとりに、ばあさまは川へせんたくにいきました。ばあさまが川でせんたくをしていると、川上から、大きなももがどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
「うまいものなら、こっちへこい。苦いものなら、あっちへいけ。」というと、うまそうな大きなももがばあさまのほうに流れてきました。
ばあさまは、ももを拾って家に帰りました。夕方になって、じいさまが山からもどってきました。ふたりで食べようと、ももをまないたの上に乗せて、切ろうとすると、ももはぱっとわれて、中からかわいい男の子が、「ほうぎゃあ、ほうぎゃあ。」と生まれました。じいさまとばあさまはびっくりしましたが、大よろこびで、桃太郎という名前をつけて育てました。
桃太郎は、一ぱい食べれば一ぱいぶんだけ、二はい食べれば二はいぶんだけ大きくなりました。ひとつ教えれば十までおぼえ、十教えれば百までおぼえました。
こうして桃太郎は、どんどん大きくなって、力持ちで、強い、かしこい子になりました。
そのころ、村に悪いおにどもが出てきて、村の人に乱暴したり、物をとったり、むすめをさらったりして、人びとは、たいへんこまっていました。
ある日、桃太郎はじいさまとばあさまの前へきて、きちんとすわって両手をつき、「おかげさまで、こんなに大きくなりましたから、おにが島へおに退治にいってまいります。どうか日本一のきびだんごを作ってください。」といいました。じいさまとばあさまは、びっくりしてとめましたが、桃太郎はどうしてもききません。じいさまとばあさまはしかたなく、日本一きびだんごを、たくさんこしらえて、こしに下げさせ、新しいはちまきをさせ、新しいはかまをはかせ、刀をささせ、『日本一の桃太郎』と書いたはたを持たせて、送りだしました。
村はずれまでくると、犬がワンワンほえながらやってきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん。どこへいくのですか?」
「おにが島へおに退治にいく。」
「わたしを家来にしてください。おこしにつけた日本一のきびだんごを、ひとつください。」
「よしよし、きびだんごを食べれば十人力になる。」
といって、桃太郎は犬にきびだんごをひとつやり、家来にしました。どんどん進んで山のほうにいくと、きじがケーンケーンと鳴いてやってきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん。どこへいくのですか?」
「おにが島へおに退治に。」
「わたしもつれていってください。おこしにつけた日本一のきびだんごを、ひとつください。」
「よしよし。」
といって、きびだんごをひとつやりました。きじも家来になりました。
桃太郎が犬ときじをつれて、どんどん進んでいくと、さるがキャアキャアさけびながらやってきました。さるも犬やきじのように家来になりました。桃太郎は、三人の大将になって、おにが島へいさんで進んでいきました。
おにが島へ着くと、大きな黒い門が立っていました。さるが門をドンドンたたくと、中から、「どーれ。」と赤おにが出てきました。桃太郎は、
「われこそ日本一の桃太郎だ。おにどもを退治にきた。かくごしろ!」
といって刀をぬいて切りかけました。
そこらにいた小さなおには、大さわぎしておくのほうへにげていきます。おくでは、おにどもは酒もりのさいちゅうでしたが、
「なに、桃太郎、なんだ、子どもか。」
とばかにして、かかってきました。こちらは日本一のきびだんごを食べているので、千人力にもなっています。桃太郎は刀をふるい、犬はかみつき、さるはひっかき、きじは空からつっつきます。その強いこと強いこと。とうとうおにどもは、みんな負けてしまいました。
おにの大将は、桃太郎の前に手をついて、なみだをぽろぽろと流して、
「命ばかりはお助けください。これからは決して悪いことはいたしません。宝物はみんなさし上げます。」とわびました。桃太郎は、
「これから悪いことをしなければ、命は助けてやる。」といいました。
桃太郎は宝物を車につんで、犬、さる、きじにえんやら、えんやらと引かせ、じいさまとばあさまのおみやげにして、村へ帰ってきました。じいさまとばあさまも村人もみんな大よろこびで、桃太郎のゆうきと力をほめたたえました。