[170x256]
巨匠ベジャールの魅力、東京バレエ団が追悼公演
2008年05月01日15時08分
モダンバレエの革新を担い続け、昨秋死去した振付家モーリス・ベジャール。四半世紀にわたり彼の作品に取り組んできた東京バレエ団が、内外の追悼公演で珠玉の作品群を上演する。5月東京公演の「火の鳥」「春の祭典」などで主役を演じる木村和夫と吉岡美佳が、身近に接した巨匠の魅力を語った。
ベジャール追悼公演に参加する吉岡美佳(左)と木村和夫
東京バレエ団が初めてベジャール作品を扱ったのは82年で、今や伝説となっているジョルジュ・ドン主演の「ボレロ」。以来、「ザ・カブキ」「M」などの委嘱作も含め、16作品を手掛け、公演回数は1270回に上る。
木村は、86年の「ザ・カブキ」初演時に力弥を演じた16歳。「無我夢中だった」という16歳の若者は10年後、「火の鳥」の主役であるパルチザンの指導者に抜擢(ばってき)される。
しかし、「ベジャールには作品への確固としたイメージがあり、ダンサーが情緒的に演じるのを嫌った。それに応じるには当時の僕は力不足だった」という。
その後、経験を重ね、ベジャールの知性がこの役に何を求めていたか、少しずつ見えてきた。今回同じ役を演じるに当たり、「この役は周りの人間と違い、未来に目線を据えた存在。人間ではなく、まさに火の鳥としてとらえたい」。
一方、吉岡は「春の祭典」で女のいけにえを演じる。96年来、持ち役の一つとなっている。ストラビンスキーの曲に振り付けたこの作品は、鹿の交尾に想を得た躍動で、ベジャールの名を不朽にした。生存本能を象徴する役に最初は戸惑ったが、回を重ねるごとに見方が変わってきた。
「女性の強さを意識して出す必要はない、と思うようになった。豊饒(ほうじょう)な大地の力強さが自然にわいてくる踊りが求められている」
ベジャールはダンサーの身体能力を見透かしたように、音楽が彼の振り付けのために用意されたかのように、自分の中の豊かなイメージに添って仕事を仕上げていった。
「ある曲を聴くと、ベジャール振り付けしか思い浮かばない」(吉岡)、「作品が出来上がる過程は奇跡を見ているようだった」(木村)と2人は振り返った。